質問にご回答いただきありがとうございました。 さて、リスクとハザードってそういう風に災害別に分類した上で考える手法では? とのことですが、それではまだ考え方を理解していただいていないと思います。 リスクとはなどをご参照ください。 「ハザード」とは、例えば毒性や爆発性など、その化学物質が潜在的に持っている危険性・有害性の度合いであり、 「リスク」とは、ハザードだけでなく化学物質に触れる量や機会も考慮した、実際の危険や損失につながる可能性です。 ハザード自体の危険性・有毒性を調査することをハザードアセスメントといい、 ハザードによる被害の可能性と被害の大きさの程度を調査するのをリスクアセスメントといいます。リスクコントロールは、このリスクアセスメントに基づいて行なうものです。 したがって、災害別に分類した上で考えるのは、リスクアセスメントの段階です。
学術的な調査研究というのは、主にこのハザードを対象に行なわれます。ハザードを考えるときに、「皮膚からの摂取は考えなくてもいい」などと言うことはできません。「どういう経路で摂取する可能性があるか」も含めてすべて考える必要があります。
まとめるとハザードとは、ある物質固有の危険性を言うのであり、 「制限量以上の化学物質を含む食物を摂取するというハザードと、農薬に触れるとうハザード」 というように、ハザードを経路で分けるのがそもそも誤りです。
質問「摂取する異常プリオン蛋白が減ると、人間が変異型CJDになるリスクは減ると思いますか?」
回答「
変異型CJDの原因となるもの(異常プリオン蛋白またはその他のもの)については増殖します。したがって単純に減るとは言えない」
ちょっと仮定の話をしましょう。増殖率(1つの異常プリオン蛋白がある一定期間にn倍になる)があるとして、これを一定と仮定します(n=2)。1個の異常プリオン蛋白が10回増殖すると、1024個になります。一方、1024個ある異常プリオン蛋白が10回増殖すると、1,048,576個になります。さらに異常プリオン蛋白が100万個を超えると変異型CJDを発症すると仮定すると、1個の異常プリオン蛋白から発症する期間は、1024個の異常プリオン蛋白から発症する期間のおよそ2倍となります。
つまり、この仮定の下では、プリオンの数が1/1000になると、変異型CJDになる期間が2倍遅くなることになります。期間のリスクが減っているわけです。
さて、以上は仮定の話ですが、一方で「一定数以上の異常プリオン蛋白が蓄積しないと、増殖が始まらない」といった説もあるようです。 一方、英国における新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)患者数によれば、 1996年に英国でヒトへの感染予防措置がとられた後、2000年をピークとして患者数は減っています。 なお、英国の狂牛病(BSE)の発生自体は92,93年がピークですが、飼料に反芻動物から反芻動物へのMBM(肉骨粉)の混入禁止が1988年となっています。なお、英国でのヒトへの感染予防措置は、 月齢30ヶ月以上のウシのSRM(いわゆる特定危険部位)の使用禁止によって行なわれています。 このように摂取する異常プリオン蛋白を減らすことで、BSEや変異型CJDが減ったという現象も現実として存在します(参考資料1, 2, 3)。
上の参考資料1にもあるように「ゼロリスク」はありえません。 非現実的な対応を検討するよりも「効果的なリスク低減」のための方法を考える必要があります。
質問「検出できない異常プリオン蛋白を検査する全頭検査は無駄というのには同意いただけるのでしょうか?」「「21ヶ月以上の牛については現在の検査法によりBSEプリオンの存在が確認される可能性がある」というのは、「20ヶ月以下の牛については現在の検査方法によりBSEプリオンの存在が確認できる可能性がない」というのと同義だと思うのですが、何が違うのかお答えいただけますでしょうか?」
回答「現在たまたま発症例が見つかってないからだけで、見つかる可能性もある」 「現在の技術では発見は非常に困難である」というのは、食品安全委員会プリオン専門調査会のメンバーの共通した認識です。議事録の一部を以下に抜粋します。
吉川座長 350万頭を調べた結果として、その21か月、23か月に関しては、日本はこれはBSE牛と認めたわけですから、そういう意味で21か月以上を検出できるという可脳性は十分ある。ただ、それを定理量的に評価したときに、一次検査でも二次検査でも検出限界に近いところにあるということもまた事実で、それを翻って考えれば、それ以下のものについて検出するのは非常に難しいだろうという、分析結果として間違っているものではない
この議事録を読めば、「現在の検出精度では、20ヶ月以下の月齢でBSE牛を検出できないだろう」ということに反対している委員はおらず、「20ヶ月という基準をこの専門委員会で決めたことにしたくない」という委員がいた、ということが分かります。
山内専門委員 結局、調査会で月齢に関連したいろんな情報も全部提供というか、整理をして分析をしていることは事実で、その結果に基づいて厚労省が20か月というところに線引きをして、そこでリスク評価をしてくださいと、このプロセスも私はいいと思うんです。ただ、この専門調査会で20という線引きを別に提言しているわけではないということなんです。
現在の技術で見つかる可能性があるという根拠は、別にないようですね。
質問「特定危険部位の除去によって、どの程度危険度が残っていると考えられているのか、その危険度はどの程度の危険度だと考えているか説明ください」 そりゃ無理。感染ルートも発症メカニズムも解明されてないんだもの。 さきほど「ゼロリスクはありえません」と書きました。 参考資料3では1988年のフィードバンの効果によって「BSEの発生危害を67%低減させた」とあります。 1990年のSRM除去の効果によって「BSE感染リスクをさらに46%低減した」とあります。 別のところで、特定危険部位の除去によって、99%の異常プリオン蛋白を取り除くことができるとの話もあります。 現実的に考えて100%除去というのはありえません。 このように感染経路自体は、かなり特定されてきている(それによりリスクを低減させている)と考えてよろしいかと思います。 「危険がなくならない」というのは、現実社会を生きている以上常につきまとうリスクであり、対策が必要というためには現実的なリスクがなければなりません。
さて、「現在たまたま発症例が見つかってないからだけで、見つかる可能性もある」というのと、 「特定危険部位を除くことによって危険度は下がりますが、なくなるわけではありません」および 「変異型CJDの原因となるもの(異常プリオン蛋白またはその他のもの)については増殖します」というのを考えた場合、現在「異常プリオン蛋白に感染する危険はないと考えられている牛乳」の安全性については、どのように考えておられますか?
めでたい。
どうも日経新聞があの天皇メモ報道以来、おかしな方向に行っているようです。 以下の記事は今日(2006年9月8日)の朝刊の2面に小さく掲載されていた記事です。 ネット上では見えないので引用します。
靖国参拝は賛否割れる
自民党都道府県連への日本経済新聞の調査で、次期首相が靖国神社を「参拝すべきだ」と回答したのは一九%だった。「参拝しても構わない」などの容認派は二四%で、合計すると四三%に達した。「参拝すべきではない」は一三%だが、「参拝できる環境整備をすることが重要だ」などの慎重派を合わせると三六%になり、参拝の是非を巡る賛否は割れている。無回答は二一%だった。
えーと、自民党都道府県連への調査ですよね。 「参拝できる環境整備をすることが重要」って、 別に靖国参拝自体を「否定」しているわけじゃないですね。 慎重派も参拝容認に加えれば、過半数以上の六六%が「首相の靖国参拝が必要」 と考えている、とみなすこともできるわけです。 賛否が分かれている、っていうほどではないですね(そもそも自民党だし)。
ご出席いただきました皆様、ありがとうございました。 台風の影響を心配しておりましたが、幸い雨に降られることがなく、ほっとしております。 青空が見えなかったのは残念でしたが、みなさまのおかげで楽しい二次会になったと思います。 これからもよろしくお願いします。